U.C.0105、シャアの反乱から12年――。
圧政を強いる地球連邦政府に対し政府閣僚の暗殺という方法で抵抗を開始した「マフティー」。そのリーダーの正体は、一年戦争をアムロ・レイと共に戦ったブライトの息子、ハサウェイ・ノアであった。
不思議な力を示す少女ギギ・アンダルシアにかつてのトラウマを思い出すハサウェイ。彼女の言葉に翻弄されながらもマフティーとしての目的、アデレード会議襲撃の準備を進めるが……。
引用:閃光のハサウェイ キルケーの魔女 WEBサイト
原作小説を読んだのは約20年前。
逆襲のシャアのサイドストーリーというか、スピンオフ程度の印象しかなかったが、これ正当な続編じゃないの。
人々の思いとνガンダムのサイコフレームが共振し、光の奔流がアクシズを遠ざけ、地球は救われる・・・。そんな余韻あるハッピーエンドで締めくくられたアムロとシャアの物語。その影で心に深いダメージを負ったハサウェイのその後がこれでもかと描かれる。
たくさんある面白ポイントのうち、これまでの宇宙世紀ガンダムと異なるがゆえに面白かったことをいくつか。
こんなふうに本作をみられるのも、宇宙世紀の物語が綿々と紡がれているからこそ。ありがと。
主人公が組織のトップ
これまでの主な宇宙世紀作品(『1st』『Z』『ZZ』『UC』等)の主人公は、偶然ガンダムに乗ることになった少年だ。
彼らは戦火に巻き込まれ、大人の理不尽に怒り、迷いながらも生き延びるために戦い、成長していった(TV版のカミーユは蝕まれていった。)。
ときには、戦いたくないから脱走とか、目上だろうが頭来たから殴るとか、両想いになった恋人のため軍を抜けるなんて、感情爆発させることもあったけど、それも一応許されていた。
けど、本作のハサウェイは違う。
まず、ハサウェイは、歴代主人公のように戦うかどうかで悩まない。自ら迷うことなくテロ活動してる。
むしろ、地球をクリーンにする!とのテロ活動の大義のため組織運営に腐心しているくらい。
アナハイムと交渉して武器を調達したり、構成員の気持ちを慮るはもちろん、世論、他の組織との連携、捕虜の処遇にも気を配る。目の前の戦術も大局的な戦略も考えなきゃならん。
さらに、真面目なハサウェイは、大義にふさわしく高潔であろうと、ギギへの肉欲に悩んじゃったりする。
これらは、かつてのパイロットだけやっていればよかった主人公にはない、組織のトップとしての重圧だ。
いろいろな事情を受け止めて、悩んで、折り合って、実行して。大人じゃないの。
成長しない
また、ハサウェイはこれまでの主人公と違って成長なんてしない。
クェスを救えなかったどころか、勝手に持ち出したMSでチェーンを死なせたトラウマに蝕まれるハサウェイ。マフティでのテロ活動に没頭するのも、このトラウマを克服したいがため。
ラストでシャアの言葉をそのままパクってたけど、ハサウェイが空っぽゆえかと、いたたまれない。
すでに精神的に摩耗し、破滅に向かいつつあるハサウェイ。それでも大義のために汚れ役を引き受ける。そこに成長への希望なんてみいだせない。
ライバルが指揮官
これまでの主な宇宙世紀作品のライバルは、敵のエースパイロットだ(「エース」にふさわしくないのもいたが。)。
MS戦でつばぜり合いしながら、お互いの思いをぶつけあうのが定番だった。
しかし、本作のライバル、ケネスは指揮官ゆえ、MS戦でつばぜり合いすることはない。
ハサウェイはケネスの有能さを認めつつ、部隊を隠したり、陽動作戦を見抜いたり、あえてひっかかったように見せたりと頭脳戦を挑む。
その場のMS戦で勝つか負けるかではない、緊張感ある腹の探り合い。そんなガンダムは記憶にない。
このケネスは、主義主張にとらわれず仕事をこなす柔軟さ、煩悩爆発、なんだかんだいってそれほどギギに執着しない等々、ハサウェイとは露骨に対照的に描かれている。
ケネスは、気に入った女性に居場所を与えることが得意で、これが口説きの一つなんだろうね。ギギには験担ぎの女神だとか、メイスには連邦のお偉方への接待に欠かせないとかね。
そんな二人が互いを認めつつ、直接相まみえないまま戦うなんて、これまでの宇宙世紀ガンダムにはなかったはず。
MS戦
これまでの宇宙世紀ガンダムでは、MS戦はMSをかっこよく描くことがキモだったけど、本作では人の視点から描くことで恐怖とか緊張感をにじませている。本作は、MSじゃなく、人が主役が徹底されている。
第1部のMS戦は、地上の人からの視点で描くことで、人権無視の地球連邦軍対テロ組織の戦闘に、天災のごとく巻き込まれる市民の恐怖が描かれる。
MSがなにかするたび、高熱のなにかが降り注いだり、ガラスが割れたり、建物が崩落したり、地上の人は逃げ回るしかない。
これ、F91の冒頭のMS戦も同じで、お気に入り。
また、第2部である本作ではMS同士の戦闘でも、コックピットのパイロットからの視点で描くことで、MSへの埋没感が増し、緊張感がみなぎる。
あれだけのセンサー類が明滅、視点も上下左右、AIからサーベルを提案されて承認、まぁ、忙しいのなんのってって考えてたら即死なわけで、そんな緊張感がひしひしと伝わってきた。
これからのガンダムのMS戦では、こんな描写も増えるんだろうと思うと楽しみ。
バックヤード
これまでの宇宙世紀ガンダムではバックヤードの描写は限られていたけど、本作では緻密、かつ情報量豊富に描かれていた。整備、操船、情報収集、訓練などなど、
多数のキャラがそれぞれの役割を果たしてたね。
メカニックのプロ、勉強熱心な若手、恋人同士、ゴシップ話に華をさかせるクルー、痴話喧嘩の元恋人同士などなど、短い時間でよくあそこまで。
ヴァリアントが撃沈されたって一報があったとき、名前は思い出せなくとも、あの人どうなったと、次々キャラが思い浮かんだもの。
ランバ・ラルとホワイトベース内で白兵戦になったとき、多数死傷者が出たけれど、「あいつどうなった」とまでは思い浮かばなかったしね。
まとめ
と、まぁ、これまでの宇宙世紀ガンダムとちょっと違うところを、徒然思い出してみた。
冒頭のとおり、こんなふうに比べられるのも、宇宙世紀ガンダムが綿々と作品を世に出してくれたから。そんな広がりをもったガンダムには感謝しかないが、今回みたいにこれまでと方向性を変えることでまだまだ伸びしろがあることよく分かった。
それにしてもさ、あのハッピーエンドらしきエンディングから、こんな物語が紡がれるなんて、普通わくわくするはずの続編が、いわば負の続編。
第三部はどうなるかこれから楽しみだけど、なんだかんだでテロリストだから。ギギに癒やされて終わりなんてならないよう、5年後?に期待するだけ。その日を元気に迎えられるよう、これからジムだ。